心と体に効く🌺フラのすすめ【ハワイ】

フラは私の長年の趣味です。
ハワイに留学していた時に習い始め、今でも続けています。
日本に帰国しハワイが恋しくなった時も、取材で世界中を駆け回っていた時も、コロナ禍の今も、ずっと私の心と体を支えてくれています。

今回は、ハワイで私がどのようにフラにハマっていったのか、そして今も続けている理由を綴ろうと思います。

きっかけは、帰国後の宴会芸に?!

フラを始めたのは、留学生としてハワイに住み始めた割と早い段階でした。「アロハ」の意味も、フラの真髄も全く知らないままに。

当時の私にとってフラはハワイのエンターテインメントであり、南の島の人々の陽気さを象徴するものという認識しかなく、習い始めた動機も「帰国したら宴会芸の1つになれば」という不純なもの(笑)。

しかしこの浅はかなフラに対する考えは、クムフラ(フラの先生という意味)ジュリアとの出会いでことごとく覆されます。

オアフでは週末になると至る所でフラショーが行われています。(photo credit: Blake Handley 2018 02 24b Saturday Hula 55 via photopin (license) )


友人に誘われて初めてジュリアのハラウ(フラの教室の意)を訪れた時、熱いハグの歓待を受けました。
とびきり明るくチャーミングで、生徒全員を全力で受け入れる包容力を持った女性。フラのほかにもタヒチアンダンス、ベリーダンス、ジャズダンスもこなす根っからのダンサーです。全身からすごいオーラを放っていて最初はかなり圧倒されましたが、常に「Sweetheart(愛しい人)」と声をかけてくれて・・・ジュリアはハワイ在住時にアロハ・スピリットの根底にあるオープンマインドなコミュニケーションを教えてくれた1人です。

↑クムフラ・ジュリアとアロハタワーでのフライベントにて

ハラウ(フラの教室)はダウンタウンにあり、家から「ザ・バス」で通っていました。下車するバス停の前には「カメハメハ大王像」がそびえ立ち、教室のすぐ隣が「イオラニ宮殿」という、史跡に囲まれた立地。
夕方から始まるレッスンは窓全開で行われ、いにしえのハワイへとタイムスリップする感覚でスタートします。

↑教室の隣にはハワイ王朝最後の宮殿「イオラニ宮殿」があり、レッスン前後はよくこの庭で友人とおしゃべりしていました


レッスンは基本ステップから始まります。これがけっこうハード。おへそから頭まで1本の糸で吊るされたように上体を伸ばし、肩はリラックスして下げ、腰を落としてステップを踏みます。

「大地を感じて」 とジュリア。

肩が上下しないよう上体をキープしながらじっくりと大地を踏みしめる動きは、体幹を使ったコントロールが必要で、数分で発汗します。そしていまだかつてない部分が筋肉痛になり・・・。

↑古典フラ「カヒコ」。チャント(詠唱)や打楽器に合わせて踊るのが特徴 (photo credit: Thomas Hawk Makena Nights via photopin (license) )


そもそもフラは何を目的としたダンスなのか?
物語の継承です。
かつて文字を持たなかったハワイの先住民が、昔話や神話を次世代に伝えるための手段でした。

歌詞の内容はハワイ古来の生活様式や文化、風習、自然と、多岐に渡ります。例えば・・・
海藻の収穫を喜ぶ人々の様子や、
愛する妻を渓流に咲く花に例えたラブソング、
女王の優雅な佇まいに敬意を表す・・・など。

フラダンサーは、言葉の代わりに全身を使って伝えるストーリーテラーです。指先で花のつぼみを作ったり、手のひらを頭上で回して風をおこしたり。1つ1つの動きに意味があるので流してはダメ、丁寧に演じて結び止め、物語を紡いでいきます。

↑現代フラ「アウアナ」。歌詞の内容に合わせた衣装やレイも見どころ (photo credit: Rick_Taylor 510 _DSC7303 via photopin (license) )


フラには次の2つのスタイルがあります。
「カヒコ」古典フラ。万物にマナ(霊力・魂)が宿るという「マナ思想」のもと、土地や自然現象を表現したり、神々や王族への信仰や祈りを捧げるもの。

「アウアナ」現代フラ。19世紀以降に観光用のショーとして創作され、ウクレレやスラックキーギターによる音楽とともに踊ります。

最初に習ったのはアウアナでした。

ジュリアからは「笑顔が大事だから、みんなの美しい歯を見せて踊ってね」と言われました。私は無理やり笑ってみせるのですが、ジュリアの「微笑み」とはかけ離れたものでした。

その後もジュリアは生徒に顔の表情を何度も注意しました。私はなんとか彼女の表情を真似ようと観察するのですがうまくいきません。

指先の少し上に注がれた視線の先に何かを見ています。笑顔というより恍惚の表情。ミステリアス過ぎて真似できる次元ではありませんでした。

思わず惹きつけられてしまうダンサーの表情は、ステップ以上に習得困難で興味深く、探求の日々が続きました。


初舞台は日曜日のマジックアイランド

ジュリアは野外にフラを踊りにいくという小さいイベントを不定期に行っていました。小さいといってもやることは本格的で、生の草花でレイを手作りしたり、ショー用のヘアメイクも手ほどきしてくれます。

↑初舞台はアラモアナショッピングセンター前にあるマジックアイランドにて。海とダイアモンドヘッドが見渡せる絶景! 一番右が新入りの私です(笑)


初舞台はダイアモンドヘッドが見渡せるマジックアイランドでした。ジュリアは開会にあたり次のような言葉を述べました。

「今日はハワイのすばらしい自然を感じて楽しみましょう! フラはLoveです。あらゆるものをRespect(尊重)する気持ちで踊ってください」

え? フラは愛? 

意味が分かりません・・・まぁいいです。当時の私にとって、ハワイのカルチャーは分からないことだらけでしたから「へー」と受け流しました。

その日のプログラムはフラ歴の長い生徒を中心に組まれ、私は1曲だけ出演することになりました。

冒頭は、ジュリアの一番弟子であるサンディのチャントからスタートしました。チャントとはお経のような詠唱で、神へ捧げられるもの。蔓草のレイを首に垂らしチャントを唱えながらシリアスな表情で舞うサンディのフラは、それまで見てきた楽しく明るいダンスではなく、魂を揺さぶられるような「祈り」でした。思えばこれが初めて観た古典フラ「カヒコ」でした。

次にベテラン生徒の1人、テスが登場。ローカル特有の褐色の肌、長い黒髪をなびかせたテスは白い水着に白いパレオを腰に巻き、白いプルメリアのレイを何重にも首にかけて、まさに女神降臨!の美しさでした。

自然を愛でるレイメイキングも楽しみ

↑ハワイのレイ文化は大好き。記念日などには花束の代わりにレイを贈ります(写真はキング・カメハメハ・デーのパレードなのでレイも飛び切りゴージャスです!)


話は少し戻りますが、フラの教室ではレイメイキングも習います。曲に合わせて植物を選んでデザインを決め、枯れてしまわないようショー当日から逆算して草花を摘んで作ります。
草花はラフィア(樹皮)で編み込んだり、針金と糸で重ねたり。出来上がったら当日まで冷蔵庫で保管・・・と、結構なひと仕事ですが、これもまた大切なフラの工程です。

↑甘い香りに癒される、プルメリアは世界で一番好きな花

ハワイは花摘みに事欠きません。プルメリアもブーゲンビリアも至る所に咲いています。ハクレイ(花冠)によく使用する葉は、近所の中学校にわんさか生えていたので助かりました。もちろん、摘む際は警備員に事情を説明し許可を取るのですが、みんな笑顔で快諾してくれました。

「花は買うもの」と思い込んでいた日本の環境では考えられない贅沢です。以来、外出する際はどこにどんな植物が生息しているかをチェックし「次はあの花をレイに使おう」という楽しみも増えました。レイメイキングによりハワイの新たな魅力発見!が出来ました。

ちなみに・・・私のハワイアンネームは「レイラニ」(美しいレイ)です😊


大自然に身体が溶け込む
フラの魅力を知った記念すべき瞬間

話をテスのフラに戻します。
青い海と褐色のダイアモンドヘッドを背景に、黒く長い髪をなびかせて踊るテスのフラは悠久の楽園ハワイを体現した神話を観ているようで、本当に素敵でした。

数時間もフラを観るのは初めてだったけれど、少しも目が離せないほどフラに魅了されたひととき。そして数日前に髪を5cm切ってしまった事を後悔しました。皆の長い髪はステップとともに潮風に揺れ、その隙間に霊気のようなエネルギーを感じたのです。

(この後、髪はフラダンサーの命だということを知りました・・・)

↑週末はピクニックのように、山や海に踊りに行きました。ハワイ在住の日本人の生徒も多かったです

そしていよいよ私の出番です!
生徒とその家族だけを集めた小さなショーでしたが、その日は日曜日とあっていつの間にか観客が増えていました。緊張するかなぁと思いましたが・・・

ダイアモンドヘッドをバックにポーズをとった瞬間
「うわ、なんだか気持ちいい」
と、まずは押し潰されそうなほど大空を感じました。

踊っている間、目に飛び込んできたのは緑と空と海だけ。吸い込んだ潮風が体にとける感覚を味わい、笑いが止まらなくなりました。大自然に包まれて泳いでいる感覚、小さく存在する自分がくすぐったい感覚・・・全てが愛おしく感じられたのです。

踊りが終わるとジュリアから「タミエの笑顔はよかったね」と褒められました。私は何の努力もしていません、ただそうなってしまっただけなのです。

その日、初めてフラを踊ることの喜びを知りました。見ている方も楽しいけれど、踊っている方はその100倍楽しい!!

↑アロハタワーのフライベントにて「ハワイアンウエディングソング」を披露。衣装はすべて日本にいる母に手作りしてもらい、送ってもらっていました


人が媒体となって伝承される。
フラは言葉

その後もジュリアは私たちを連れて、マノアの滝、夕暮れのアロハタワー、夜のワイキキビーチで踊る機会を設けてくれました。

極め付けはハワイ島のキラウエア火山。
フラダンサーなら誰もが憧れる、火の女神ペレの住むキラウエア火山で、神に捧げるフラを体験させてくれたのです。今でも深く深く心に刻まれた大切な思い出です。

↑フラを愛した火の女神・ペレが住む言われるハワイ島・キラウエア火山の火口にて、カヒコを踊りました。思い出深いワンシーン


ハワイの自然に身を置く機会が増えるにつれて、ジュリアのいう「花を感じて」「星空を感じて」という言葉の意味や、あのミステリアスな表情がどこから来ているのか理解できるようになりました。

フラとは、肉体を通じて発する言葉。フラを踊るということは、歌詞に存在する「ある瞬間」をそのまま体験し直すことです。

花の甘い香りが漂う渓谷も、星が煌めく夜空も、悠久の時を経てなお繰り返される「瞬間」。その体験を増やすことで、豊かな想像力・表現力を身につけさせようとしてくれていたのだと思います。

↑ジュリアを囲んでフラシスター大集合。私の髪もだいぶ伸びてきました(左上)。生徒は国籍も、肌の色も、年齢もさまざま。みんな笑顔が素敵で、アロハ・スピリットに溢れていました。


最初は少し戸惑った
「アロハ」という名の無償の愛

ハワイの人々との交流や、文化、歴史に触れる機会が増えるにつれて、初舞台でのジュリアの言葉「フラはLove。あらゆるものをRespect(尊重)する気持ちで踊る」の意味も、なんとなく理解できるようになりました。

留学当初の私は、知人も親戚もいない異国の地で初めての一人暮らしだったため警戒心の塊でした。そんな中、多くの人が愛ある言葉で接し、手を差し伸べ、常に寄り添ってくれます。赤の他人なのになぜ? 最初はそのカルチャーが理解できず疑心暗鬼になっていましたが、次第にそれが「アロハ・スピリット」だということを知ります。一言では説明しがたいですが、両親から受ける無償の愛によく似ていました。

「アロハ」は挨拶に使われる有名なフレーズですが、愛・慈悲・尊敬など日本語にすると30以上もの相手を思いやる言葉が含まれています。

さらに、「あらゆるものをRespet(尊重)する」とは・・・・
古来からハワイの人々は、世界の万物に「マナ」という魂(エネルギー)が宿ると考えてきました。

「アロハ・スピリット」も「マナ思想」も、どちらも「あらゆるものを尊重する」ことに繋がっていたのです。


フラは生涯続けていきたい趣味

↑日本でも先生や仲間に恵まれてフラを続けています。髪も伸ばし続けています(右上)


2年間のハワイ留学を終え、帰国後約20年経つ今でも細々とですがフラを続けています。

今教えていただいている「カヒキラニ フラスタジオ」のエリコ先生は、毎年ハワイ島で開かれるフラ競技会の最高峰「メリーモナーク フェスティバル」への出場経験もお持ちで、最高にエレガントで美しいフラダンサーです! じつはハワイ在住時に知り合い、そのときにアロハを分かち合ったという絶対的な信頼感があるのも、これまで続けてこられた大きな理由だと思います。

↑皆の憧れの的、エリコ先生のフラは優雅で本当に美しい!うっとりしちゃいます♡

↑日本のフラシスターと。ホイケ(発表会)にもたくさん出ています


フラは心身の健康にも、美容にも効果があると思います。

森羅万象をイメージしながら、体を使ってアウトプットしていく・・・これを繰り返し練習していると、曲を聞くだけで、波の音、花の匂い、滝のしぶき、心地よい潮風を瞬時に蘇らせることができます。←癒されます

ひとたびステップを踏めば、脳内で時空を超えた旅が始まります。←ストレス解消になります

インナーマッスルも鍛えられるし、美しい姿勢を保とうという緊張感もあります。←健康維持

素敵な衣装にときめいたり、甘いレイの香りに包まれたり。←女子力UP&アンチエイジング

何よりフラシスター(教室の仲間をこう呼びます)との出会いはかけがえのない宝物。←これが一番ハッピー!

良い事づくめです😊

↑ホテルのイベント会場を貸し切って複数のフラ教室合同のクリスマスパーティ!食事をしながら順番に舞台でフラを踊る楽しい会です。ちなみに、日本のフラ人口は200万人とも言われています。ハワイの人口を超える(⁉︎)人気ぶりです


そして・・・フラを始めた動機「宴会芸の1つになれば」(←言い方w)というのも、「アロハをシェアする」という形でしっかり実践しています!
取材先やハワイでのヴァカンス中に披露したり、「ハワイアンウエディングソング」は親戚・友人の結婚式で何度も踊っています。

↑写真家・森田米雄さん主催の音楽イベントで踊らせてもらいました/家族旅行でハワイに行くと必ずフラタイムがあります。一緒に踊っているのは姪っ子


フラをやっていたおかげで、なんだかんだ困難なコトも乗り越えられました。
フラは老若男女(男性のフラも人気です!)生涯続けられる趣味です。
日本にもたくさん教室がありますので、ご興味があればぜひ♡オススメです!

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