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地球を思い、海と向き合う。アマモ場再生プロジェクト【横浜】

かつてのアマモ場を取り戻したい

横浜の片隅で「アマモ」という海草を増やす活動が行われているのをご存知ですか? 浅瀬に広がるアマモの草原は「アマモ場」と言われ、魚やイカが卵を産み付けるなど、多種多様な生き物たちにとって繁殖や生活の基盤となる大切な場所で「海のゆりかご」とも呼ばれています。

↑流されないよう、アマモをくわえて寝るアミメハギ。右下にはハゼの姿も

かつて東京湾には多くの干潟やアマモ場がありましたが、沿岸が埋め立てられて港や工場が建設されるとともに、ほとんどがなくなってしまいました。そんなアマモ場を取り戻そうと「NPO海辺つくり研究会」が中心となって2003年に「金沢八景-東京湾アマモ場再生会議」が設立され、再生活動が始められたのです。 

今では産官学民を問わず多くの方が関わるアマモ場再生を、長年牽引しているのがこちらのお二人です!

𓇼写真左:「海辺つくり研究会」理事・事務局長の木村尚さん。海洋環境のスペシャリストで、日本テレビ「ザ!鉄腕!DASH!!」のDASH海岸でもお馴染み!

𓇼写真右:神奈川県水産技術センター 主任研究員の工藤孝浩さん。長年、水産業の振興や水域環境の保全に努めていらっしゃいます。

私は「月刊DIVER」にいた頃から読者参加型のアマモ場観察会をコラボさせていただくなどお世話になっていて、そこから飲み仲間になったり笑、公私共に親しくさせていただいております。

アマモ場再生の拠点となるのは金沢八景沿岸にある「野島」「海の公園」。この辺りは横浜で唯一の海水浴場があり、潮干狩りや釣りなども楽しめます。横浜の中でも、かつての江戸前の雰囲気を残す数少ない場所です。

↑沖から見た「海の公園」「野島」の海岸線

工藤さんは学生だった1980年代から野島に潜り続けていて、約40年の水中の変化を次のように振り返ってくれました。

「1990年代前半にかけてアマモ場はじょじょに衰退し、ついに両手でかかえられる程の群落が3つになってしまいました。来年は無くなるだろうなぁと思っていたところ、不思議なことに90年代後半から毎年倍々に増えていったんです。水質調査などでは変化がなく、はっきりとした理由は分かりませんが、ちょうどバブルが崩壊し経済活動が失速したことが理由の1つではないかと推測しています。そこで、元気を取り戻しつつあるアマモの後押しをしようと活動が始まったんです」

産業や経済が失速すると、海が元気になる・・・・・・コロナ禍の今、世界中のビーチリゾートから聞かれる「海や空気がきれいになった」という状況に似ています。事実、環境省によれば2020年度の日本の温室効果ガス総排出量は前年度より5.1%減り、排出量の計算を始めた1990年度以降、3番目に大きい減り幅だったと発表(12/10速報値)。はやりコロナ禍による経済活動の停滞が主な要因とのことです。


CO2削減のキーとなるブルーカーボン

アマモ場があることによって、他にもたくさんのメリットがあります。

①水質浄化:赤潮などの原因となる栄養塩(窒素やリン)の吸収。透明度アップ。酸素供給など
②生物多様性の維持:産卵場の提供。稚魚や稚貝などの育成
③CO2の吸収:藻類の光合成
④海岸の保全:波浪の抑制、底土の安定
⑤環境学習の場:ダイビングや生物観察

出典(一部抜粋)「藻場・干潟等の現状と問題点等」平成20年5月、水産庁、第1回 環境・生態系保全活動支援制度検討会資料

中でも最近は③の「CO2の吸収」に注目が集まっています。

ここで質問です!「ブルカーボン」という言葉を知っていますか?
森林など陸上の生き物によって吸収・固定されたCO2(二酸化炭素)がグリーンカーボン、海草やワカメなど海の生き物によって吸収・固定されたCO2がブルーカーボンと呼ばれています。

2020年10月、当時の菅総理が「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と発表しました。「カーボンニュートラル」「脱炭素社会」を目指すためにはCO2排出量の削減はもちろん、吸収量を増加させることも重要。その手段としてブルーカーボン、すなわちアマモが注目されているのです。


アマモの苗床作りに挑戦!

アマモ場再生活動は次のとおり1年を通じて行われています。

苗を海に移植
アマモの花枝を集め、花枝は種が熟すまで水槽の中で保管。水槽の底に沈んだ種を集めて1粒ずつピンセットで拾う
苗床に種をまいて育てる  ←今回参加したのはこちら

今回は、11月にわれたアマモの苗床作りの模様をお伝えいたします!

↑木村尚さんのご挨拶からスタート。本来であれば一般参加者を募ってイベントとして開催されるのですが、コロナ対策で去年からスタッフのみで行われることに。それでも、この日は活動に賛同する国交省や複数の企業、学生が港に集まりました。皆さん、それぞれの立場で「海を守りたい」「勉強したい」と仕事の枠を超えた意気込みでいらしていました。

かくいう私も、海を愛する一人として社会貢献したい、横浜市民として地元の海を守りたい、いや、何より海に行きたい⁉︎ と意気揚々。

↑作業する「柴漁港」。気持ちいい秋晴れに恵まれました

↑こちらが本日の主役、アマモの種。本来であれば野島のアアモの種を使うところなのですが、今年は数が少なく、対岸の千葉・木更津にある盤州干潟(ばんずひがた)で採集されたものが使われることに。

昨今の地球温暖化や多発する台風のため、あちこちでアマモが無くなり、だからこそ増やそうとしているのだけれど、もはや種を採るのも困難だそう。事態は深刻です。

袋の中には貝や石も混ざっているため、ザルを使って種を選別。作業しているのは地元の金沢小学校の生徒です。
金沢小学校の生徒たちは、毎年ここで種をもらって校内でアマモを育て、移植すると同時に国土交通省の関東地方整備局へ種の一部を持参し、東京湾の環境改善の政策提言を毎年続けています。2021年6月にはその活動が評価され環境大臣賞を受賞しています。素晴らしい環境教育です!

↑こちらが種! ゴマ粒ほどのサイズです。

状態の良い種を選別するため、バケツに食塩水を作って種を入れます。しばらくすると・・・・・・

↑一部の種が浮いてきました。沈んでいる種のみ使います

↑約1,500粒の種が整いました!

一方で、苗床となるプランターを用意します。腐葉土と砂を1:1の割合でよく混ぜたプランターに海水を入れ空気を抜きます。アマモの種は酸素に触れると発芽しないので、しっかり空気を抜くことが大事です。このような細かいノウハウも長年の活動の中で培われたもの。

3cm間隔で3cmの深さの穴を作り、そこに3〜4粒ずつ種を入れます

準備が整ったプランターがズラリ。これらを大きな水槽へ移します

↑種が流れないよう、表面をラッピングしてそっと水の中へ

発芽はすぐに始まり、12月中旬ぐらいには芽が見え始めます。2週に1度、海水を入れ替えるなど丹精込めて育てられ、4月下旬には30〜40cmに成長し、苗として移植先に運ばれます。

多くのスタッフが参加したアマモの苗床作りは10時にスタートし、なんと12時前には終了。途中、港に現れた生き物を観察したり、漁師さんの粋な計らいでアナゴのタッチプールが登場するなど海辺ならではの1日が楽しめました!


東京湾を世界遺産に

「金沢八景-東京湾アマモ場再生会議」によるアマモ場再生は、市民活動としては国内で一番最初にスタートしました。今では全国に普及し、毎年「全国アマモサミット」も開催さています。

木村さんにこの取り組みの目指すところを改めて伺いました。
「いろいろな所でやっているので、こういう機会があったらぜひ参加してみてください。海はその土地に住む人々のモラルの象徴です。多くの人が環境再生に関わることで日々の生活を改めれば、モラルも向上し高度な経済発展をしながらきれいな海が保たれる・・・・・・そうなったら東京湾が世界遺産になるのも夢ではないです。最終的には東京湾を世界遺産にしたいと思っています」

素敵な目標です。私も横浜から世界を救う気持ちで活動を続けていきたいと思います! コロナが落ち着いたら一般参加も可能になりますので皆さまもぜひ!

↑質の高い街づくりを目指す「みなとみらい21」でも汽車道の護岸でアマモ場再生が試みられています。横浜だけでもさまざまな場所で取り組まれています(写真はロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」から見下ろした汽車道)


もう一つのお楽しみ♪ 海辺のランチ

解散後は柴漁港内の食堂でランチ! 

巨大なアナゴ、イシモチ、野菜が乗った天丼をオーダー。アナゴがふわっふわでおいしかったー。この日に知り合った海辺つくり研究会の10代、20代のフレッシュな面々と食事をしながら海の話で盛り上がりました。ボランティアは年齢も職種も違う人々と出会える貴重な機会でもあります。苗の成長を楽しみにしつつ、続きはまた春に𓇼𓇼𓇼