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イルカ・クジラからのメッセージ。海洋プラスチックの新たな問題

「きれいに捨て去った」と思ったモノでも、地球のどこかに浮遊している・・
海に潜っていると、そんなことが容易に想像できる場面に遭遇します。

海外の有名ケーブ(穴)ポイントに大量のゴミが吹き溜まっていたり、ある途上国のビーチポイントにびっしりとキッチン用品が落ちていたり。海ゴミはスケールが大きくて、仰け反ってしまいます。

とくに近年大きくフィーチャーされているのはプラスチックゴミ。
ある統計によると、海には年間約800万トンのプラゴミが流れ込んでいて、2050年までには魚よりプラスチックの量が多くなると言われています。

暮らしが便利になるにつれて、増加してきたプラスチックゴミ。

では、プラスチックゴミの実害は何か・・・

ウミガメが、クラゲと見誤ってビニール袋を食べてしまったとか、
ウミドリがプラスチックを誤飲して死んでしまったなど、
野生動物への影響はたくさん報告されてきました。

いっぽいう、人体への毒性はまだ解明されていません。
ここがわかれば、もっと国を挙げてプラスチックゴミの解決に向けた取り組みが加速するのに・・・と思っていました。

そんな中、思わぬところで手がかりとなる調査・研究が進められていたのです。
それは・・・沿岸に打ち上がったイルカ・クジラたちでした。


ストランディングって?

イルカやクジラなどの海の生物がビーチに打ち上がったり、湾に迷い込んだりする現象を「ストランディング(Stranding)」(座礁・漂着するという意味)といいます。

先日、イルカ・クジラのストランディング研究の第一線で活躍されている国立科学博物館・研究主幹の田島木綿子先生のオンラインセミナーに参加しました。

ここからは、田島先生の提供画像とともに、ストランディング調査・研究について説明していきますと。。。。

日本の沿岸では年間約300件ものストランディング(イルカやクジラが漂着する)事例があります。

そもそもなぜストランディングしてしまうか。
黒潮の流れが変化して起こる自然要因もありますし、
人間が作り出す音に反応して起こる人為的要因もあります。
すでに死亡しているので、1体1体を解剖して細かく分析されています。

いっぽうで・・・
ストランディング個体は、海の環境問題を解明するための貴重な標本・資料としての一面もあるのです。今回はそこにフィーチャーしたいと思います。

これは20年前のストランディング個体の胃。プラスチックゴミの誤飲による死亡?海が汚染されている事実を確認

海洋プラステックゴミは近年になって大きく取り上げられることが多いですが、
田島先生が調査しはじめた20年前から、すでにストランディング個体の胃からたくさん発見されていたそうです。
そして20年たった今も、右肩上がりに量が増えたということではなく、同じように多いのだそう。


近年わかった
プラスチックゴミの害と免疫低下

いったん海へと流れたプラスチックゴミは陸に打ち上げられないかぎり、ずっと浮遊し続け、やがて波や紫外線の影響で小さい破片になります。

5mm以下になったものはマイクロプラスチックと呼ばれ、
海水と混じり合った末に貝や小魚に取り込まれ、やがては鳥や人間など陸上の生き物も摂取することに。。。食物連鎖です。

実際、2年前には人間の排泄物からマイクロプラスチックが見つかったという研究発表がされています。

「でも、排泄すれば問題ないでしょ?」
汚染物質を気にしていたら、今の世の中何も食べられないし、腸活をすればいいのでは?なんて思っていましたが・・・そうではなかったんです。
本当の脅威はここからでした↓↓

海洋プラスチックには環境汚染物質が付着し、その多くは脂に溶け込みやすい性質を持っている。メスの場合は母乳に高濃度に蓄積され、母乳を介して子供へ移行してしまう。

これまでも、海の生態系のトップに位置するイルカ・クジラは、食物連鎖を介して(エサから)環境汚染物質を取り込んでいましたが、さらにプラスチックゴミからも取り込むWショック状態に。これがなぜ大問題かというと・・・

環境汚染物質の中には、体内に蓄積すると免疫低下を起こしてしまうものも含まれている

というのです。さらに、

海の哺乳類に起こっていることは、同じ哺乳類である人間にも起こりうる

のだと
免疫力が低下すると、感染症にもかかりやすくなります。まさにコロナが蔓延する今、大変なツケが回ってきてしまいました。


日本は遅れている、
ストランディングに対する認識

打ち上げられたイルカ・クジラの体が
海洋汚染の実態を明らかにしたり、
人間を含めた生き物へのプラスチックの影響を示唆している・・・

ストランディング個体は貴重で、大切に扱われるべきですが、
日本では国レベルの専門機関や予算配分はなく、博物館や大学など学術機関の方々が自らの研究のために対応しているのが現状。

予算不足・人手不足で、年間300件のうち、対応できているのは50〜60件。ほとんどが地方自治体により粗大ゴミとして処理されたり、人知れず朽ちていっています。それはとてももったいないこと。

研究者や博物館は、標本や資料が欲しいんです」と田島先生は訴えます。

欧米ではストランディングの意義が早くから認識されていて、
アメリカでは大統領直下で保護される法律があり、広いネットワークのもとシステム化されています。海軍も陸軍も、ストランディングネットワークに協力しなければいけないのだそう。

タイ、ミャンマー、台湾、ベトナムなどアジアの国々もストランディング対策に予算をとっています。


私たちに出来ることは?


もう1つ、あまり知られていないと思いますが
海岸ゴミの「7割」は川から流れてきたものなんです。
あとの「3割」が来遊客からのゴミ。
改めてその経緯をたどると。。。

街中のこういう側溝からプラスチックゴミが流れ、海へと運ばれていきます。

海に流れついたプラスチックは、紫外線や波などの作用で細かくなり、海を漂います。

ストランディングしたイルカの体内からプラスチックの破片が複数見つかりました。ゴミを間違って食べているんです。

生活圏内のゴミが側溝や川を伝って海へと流れ、
やがてはイルカ・クジラの胃の中へ・・・。
「海でのポイ捨て」はもちろんNGですが、「街中でのポイ捨て」も深刻です。
さらに、ポイ捨てしたつもりのないモノでも風に吹かれて側溝に運ばれてしまうパターンもあります。

プラスチック製品を減らしていかなければいけない理由はこんなところにもありました。

レジ袋の有料化や、ストローの脱プラなど、日本も徐々に脱プラ化に向けて動いていますが、とくにプラスチック容器やペットボトルへの対応はまだまだ。

今回のオンラインセミナーには高校生・大学生、水族館やアウトドアアパレルメーカーなど、イルカ・クジラや環境問題に関心の高い人々が約70名参加しました。最後の質疑応答で、
「個人で何かできることはないか」
という参加者からの質問に、田島先生は次のように回答されていました。

今後もこのような講演の機会を増やしていきますので、聴講した人がそれぞれの立場で問題提起をしたり、知識の普及・啓発して欲しい。

ストランディングの現場は、技術や知識も必要なのでボランティアでの参加は難しいですが、たとえばビーチクリーンナップに参加したり、プラスチック製品の購入・使用を見直したり、野生生物と触れ会う機会を増やすことも大切です。

さらに、ストランディングの研究を支えてくれる企業とのコラボも必要不可欠です。たとえば以下のような物資、とくに運搬用の車が必要とのこと。

>運搬用の車両:ハイエース。キャラバン、軽トラなど
>標本用の容器:シート、ガムテープなど
>調査道具:計測器具。解剖刀、作業着、長靴、ハサミ、メスなど
>コラボ事業、コラボ企画、コラボ活動など

我こそは!という企業は下記に直接連絡をしてください。
問合せ先>> 国立科学博物館・田島木綿子先生

また、海岸でストランディング個体を見つけた場合は、最寄りの地方自治体の役場や警察など公的機関か、水族館のいずれかに一報を。田島先生にも情報を寄せていただきたいとのことでした(メールアドレスは上記HP内)

ストランディングのお話しはとても奥が深かったです。
イルカ・クジラたちは、身を挺して人間の未来を暗示し、
解決すべき課題を我々に与えてくれている気がしました。

田島先生はイルカ・クジラの体内に取り込まれてしまったマイクロプラスチックについて、新たな研究に取り込まれているとのこと。今後も目が離せません。


※今回のオンライン講座は、大手町・丸の内・有楽町地区を舞台に環境共生型のまちづくりに貢献する事業を推進・支援する「一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会(エコッツェリア協会)」が主催し実施されたものです。

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